「社長。」
「おう、今口君。」
「今日、お話させてもらっていいですか?」
「ああ、ツアーの企画会議が終わったら時間が取れそうだ。仕事が終わったら、『レンガ屋』で待っててくれないか?」
「わかりました。」
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「待たせたかな?すまん、すまん。」
「いえ、大丈夫です。お疲れ様です。」
「飯、食べながらでもいいかな?今日、昼飯食いそびれちまって、腹がなってしまってな。」
「あ、どうぞどうぞ。」
「今口くんは食べたか?」
「いえ、俺もまだです。」
「じゃぁ、一緒に夕飯だ。」
「さて…。どうだ?考えてみたか?その話なんだろ?」
「は、はい…。」
「考えはまとまったか?」
「はい。俺、今まで自分の将来のことなんて考えたこと、なかったから…。いろいろ考えました。社長から言われたことも…。」
「そうか…。」
「俺、東京に出てみようと思います。社長の言う、最前線に出られるようなものを身につけたいと思います。」
「うん…。」
「ただ…」
「ただ?」
「就職先は自分で見つけようと思います。」
「そうか。」
「社長から紹介してもらえたら、スタートからつまづくこともないと思いますが、それでも自分を試していかないといけないと…。仕事で納得いかないときに社長のせいにしてしまいそうですし…。
「うん。」
「甘いかもしれませんが、自分でなんとかしてみます。もし旅行会社に就職できなければそれはきっと今の俺がそれまでの力しかなかったんだと思うんです。」
「なるほど。」
「だから…。折角の社長からのお言葉ですが、会社を紹介してもらう件は、お断りしたいと…。」
「そうか…。わかった。頑張ってみろ!」
「すみません、生意気言って。」
「そんなことはない。自分を信じてできることを精いっぱいやってみるんだ。」
「ハイ。」
「じゃぁ、今口君の新たなスタートに乾杯だ!」
「ありがとうございます! …。」
「ん?どうした?」
「翔馬のことなんですが…。」
「翔馬?」
「はい、翔馬、あいつもきっと頑張ると思います。社長、やつを信じてやってください。きっと、あいつはあいつなりのやり方で…。」
「そうか…。どうも自分の子供のことになると…、いつまでも子ども扱いしたくなるんだろうなぁ。わかった、息子の親友からの言葉としてありがたく聞いておくよ。」
「ありがとうございます。」
** 【9月30日記事の転載】 **
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