「まずは笛吹琴未のパンフレット作りよ」
「私のパンフレット…。」
「そう。履歴書の欄をただ埋めていけばいいってもんじゃないわ。応募者は山の様にいるのよ。判で押したような決まり文句が並んでる応募書類を沢山見せられる方はたまったもんじゃないわ。ここで見る人の目を引かないとね。」
「ふーん…。で、どうやって?」
「どうすると思う?」
「やっぱり、カラフルな方が人目を引くわね。それに写真も沢山入れて…。あ、ダメよ写真は!私、写真うつり悪いんだから…。」
「パンフレット作りってのは、ものの例えよ!どこの応募書類にカラフルであんたのピース写真入ったお茶目なやつがあるっていうのよ!」
「えー、そうなの?」
「そうなの、って、常識で考えなさいよ!…ん?常識か…」
「どうしたの?」
「もしかして、面白いかも…。作っちゃうか?琴未のパンフレット。あんたを常識の土俵で戦わせるてのが、そもそも無理があるものね。」
「それって、誉めてるの?」
「そうよ、自信持ちなさい。就職活動で大事なことは『志望動機』、つまりは『何をやりたいか』って、ことよ。」
「死亡…動悸…。死ぬ前にやりたいことってこと?私、まだ死にたくない…。」
「あなたが旅行会社で『どう暴れたいか?』ってことよ。」
「べ、別に暴れたくは…。」
「まぁ、あなたのキャラにはないわね。まぁ、あなたが会社に入って一生懸命打ち込んでいる姿を想像してみて。どんな仕事をしているところが思い浮かんだ?」
「やっぱ、自分だけのツアーを考えて、パンフレットとか作ってるとこかな?」
「でしょ?あなた、きっと天職よ、この仕事。ってことは、パンフレットはもう、あなたの志望動機そのものよ、きっと。だから、ちまちま慣れない文章で表現するより、『笛吹琴未』をパンフレットにしちゃうのよ。就職活動では志望動機がこれからやりたいこと、そして、自己PRが今までの自分、そして能力よ。目を引くパンフレットを見せれば、ただ者ではないって思わせるようなのを作れば、説明はいらないわよね。」
「ふ~ん…」
「なんか、気のない返事ね。」
「だって、私のパンフレットって言ったって。」
「じゃぁ、明日持ってきてあげる。」
「何を?」
「私のいとこのお姉さんの結婚式に出たときにね、」
「うん…」
「お姉さん、広告部門で働いていたからね、広告代理店の計らいで、商品パンフレットに見立てた新郎新婦の紹介をね、出席者に配布したの。それ結構面白かったから…。」
「へぇ~、何だか面白そう!」
「でしょ?でもね、あんたは、お楽しみってわけにはいかないわよ。何たって、のるかそるか一世一代の見せ場なんだからね!」
「えーっ!そんな…。大丈夫かなぁ私。国分寺ぃ~。」
「情けない声出さないの。あんたなら大丈夫よ。きっと私が思いもよらないようなもの、作れるわよ!太鼓判、押したげる!」
「なんか、国分寺、勢いで言ってる…。」
「いいから、いいから。」
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